2004年 07月 13日
ペンギン
後の調査で分かったことだが、その男の名は山田祐二だったらしい。



だった、と言うのは今は違うからだ。彼は彼を捨てたのだ。


彼と私の出会いは波止場の近くのとある紡績工場の一画だった。
彼は何かから逃げていた。
彼は真っ赤なコートを羽織っていた。そして右肩を押さえていた。

「助けてくれ」

それが彼の私に対する初めての言葉だった。
気が動転していた私だったが、言われるままに彼をかくまった。


彼の怪我は酷いものだった。
恐らくもう少し遅ければ命に関わっていただろう。
それは気質の世界のものとは全く異なる怪我であった。


怪我も大方治り、一息ついたところで彼の素性について軽く聞いてみた。

しかし、彼はただ「すまない」と言うだけで何も語ってくれない。
裏の世界を渡ってきたのだろう。そう易々といくものではないだろう。

ただこのまま名前も分からない状態ではどうしようもないので彼をKと呼ぶことにした。
とにかく私は時間に彼を委ねた。



体調が全快したKは私に恩返しがしたいと言った。
私は探偵事務所を営んでいた。不況の影響で青色吐息の毎日であった。
そこで、彼の経験を生かして私の助手をさせてみることにした。

Kは水を得た魚のように、その能力を遺憾なく発揮しだした。
天性のカンに深い洞察力、ずば抜けた身体能力に甘いマスク。
一ヶ月はかかる仕事は一週間で済み、一週間かかる仕事は三日で済んだ。


しかしながら、そんな優秀な彼にも唯一弱点があった。



ある女性ターゲットを尾行していた時のことだった。
私と助手である彼は足音には細心の注意を払っていた。


ぺたぺた


その瞬間、ターゲットは私達に気づきアジトまで後一歩の所で逃がしてしまったのだ。

そう、彼の弱点は足音だった。






そこで私はKにあだ名を与えることにした。

a0002244_33955.jpg


第6回マウスでお絵かき大会
[PR]
by bi-ya | 2004-07-13 03:41


<< 僕はシロクマ      私信赤い青 >>